我が家は築60年近い古民家再生ハウス。売主である前の住人が、約9年前に買い取り、ボロボロだった家をDIYリフォームで住めるようにしていました。周囲から建て替えた方がいいと言われながらも、ボロ家を自力で再生したので、前の住人はかなり頑張ってリフォームしたとして、近所では一目置かれていたようです。
確かに、外観も室内も、一見すると良くリフォームされていました。トイレは水洗洋式、風呂も追い炊き可能なモダンなもので、大きな不便はありません。まあ、井戸水をメインにしているため、トイレと洗濯機で同時に使うと、水量が足りずにポンプが止まってしまうということがあります。氷点下5度ぐらいを下回ると、水道管が凍り付いて、朝方トイレの水が流れなくなり、別の場所でバケツに水を汲んで、タンクに入れて流すということもあります(その気になれば、いつでも直せます)。ただ、いくらか不便ながらも、家としてはそれほど致命的な欠陥ではありません。(笑)
今思うと、前の住人が「劇的〇フォー・ア〇ター」といったテレビ番組等で構造的にいい加減なリフォームを目にして、参考にしたのではないか? 個人的にはあまりその番組は見ていませんでしたが、たまに構造的にも他の処理でも杜撰なリフォームがあり、既に様々な訴訟問題も発生していますね。
私は大学では一般住宅の設計等はまったくやらなかったので、一般人同様のド素人です。大学に入った際は、「実践的な知識や技術を身に付けたいなら、専門学校に行きなさい。建築士の資格を取りたいなら、社会に出て、実務経験を積む中で、独学して受験しなさい」というものでした。実際のところ、指導教授の中には、一級建築士の資格を持っていない人もいました。完璧な芸術家気取りですので、歴史、理論、芸術性にはこだわって勉強したとしても、実践的な知識を持っていません。だから、そんな教授たちは、設計を行うと、構造計算の得意な建築家に、「これが実際に建つように計算して下さい」といった感じで、設計だけは行って、その後の実際的なことは完璧な他人任せなのが現実です。
構造計算は、非常に難しいものなので、実際のところ、ほとんどの建築家はできないといっていいと思います。ただ、一般住宅に関しては、常識的にこのように設計すれば問題ないというレベルでやっているので、それほど必要ないのも現実です。ただ、リフォームに関しては、もっとも注意が必要な分野で、専門家でも誤った判断を行いやすいので、テレビ番組で紹介された業者においてもトラブルが発生してもおかしくありません。
そんな環境に居たこともありますが、自分の場合、そもそも芸術の方に関心があり、どうしても建築には馴染めなかったので、結局、ギリギリ卒業できるレベルで授業には出席したものの、当然何も身に付かず、二級の資格も取らず、ド素人と同じ状況での卒業となりました。今思うともう少し勉強しておいた方が良かったと思いますが……。
さて、我が家の状態ですが、引っ越してきた当初、ネズミの死骸による異臭問題や床下の湿気問題が気になり、屋根裏を掃除し、ネズミ侵入口を塞ぎ、基礎に穴あけを行って通気を改善させることなどを優先していました。目的はそんなところにありましたので、しばらくは、構造的な部分をあまりチェックしていませんでした。
しかし、床下や屋根裏に何度か入るうちに、「おやっ?」と思うものが続々と出てきました。業者に頼むと、屋根裏や床下に潜り込むという面倒なチェックはなかなかやらず、壁、床、天井を剥いで確認して、全面リフォームか、建て替えという方向性に間違いなく向かってしまいます。自分の評価では、柱を3本追加&2本補強、屋根を支える梁や短い柱を数本補強、その他もろもろといった感じです。業者に頼めば数百万、いや、建て替えと同じぐらい費用を要するかもしれません。工芸的な襖、戸、雪見障子など、現在では入手困難なものが多く使われていて、それを維持していくとなると、やはり、自分の家に関して一番理解している自分で一つずつ片づけていくしかないというのが結論。
最大の問題は、前の住人が長く巨大な梁を途中でちょん切ってしまい、それを支える柱が片側にないことです。まさかと思うような、信じがたいことですね。(汗) 直交するような梁に乗っていることもありません。現状では、その上で直交する梁から垂木が2本下に渡してあり、吊っている状態なのです。そのため、その梁に過剰な負担がかかり、それを支える柱に亀裂、しなりが進行していて、1日でも早くそれを解消せねばなりません。311で倒壊しなかったのが奇跡ですが、9年前のリフォーム直後から、今日に至るまでに日に日に負担が及び、何かきっかけがあれば、倒壊していくだろうというのが自分の判断です。他にもいろいろと問題がありますが、この巨大な梁を下から支えることがスタートです。
まず、柱を立てる場所、つまり、梁の端部の真下に相当する天井に穴を開けます。次に、その梁の底面で、新たに立てる柱の中心が来るべき場所にネジを打ち、糸を結び付けて、先端に錘(おもり)を付けて垂らします。

今度は、その錘が来る位置の床に穴を開けます。ここで、床に穴を開ける前に、床板を支える根太(垂木)や大引きを切断してしまわないように、床下に潜って確認します。今回の場所では、大引きは干渉しませんが、根太が邪魔して切断が必要です。そのため、床を補強すべく、新たな垂木を大引きとの間に挿し込んで、穴の両脇を補強しておきます。これは、床下での作業なので、なかなか大変です。
床全体を剥いでしまえば簡単ですが、やはり寒さに耐えられないことと、床の貼り直しを避けたいので、最小限のサイズの穴のみ開けることとしました。穴が開いたら、錘を吊るした糸をさらに床下に下げます。そして、その位置で基礎作りです。
基礎は重量ブロックです。但し、その前段階として、床下の土を少し掘り下げて、砂利を敷き、重い石で叩いて固めます。水準器を見ながら水平にします。その上にブロックを乗せて、水準器で水平になるまで何度も微調整を繰り返します。これが最も面倒な作業かもしれません。ブロックの上面には、サインペンで線を何本か引いておき、糸で吊るした錘が予定した場所に合うように、さらに微調整をして位置決めを行います。この作業で半日つぶれてしまったので、翌日、ブロックの穴や周囲にコンクリを流し込んで固めました。
今回、柱を立てるにあたり、土台として、柱と同じ角材を使って、それをアンカーボルトで固定することにしました。基本、昔の家なので、外周部の布基礎以外、石の上に柱が乗っているだけという構造ですが、これは重要な柱になることを考えて、例外としました。そんな訳で、コンクリを流し込む際、アンカーボルトも同時に設置せねばなりません。ここで私はアンカーボルトを押えておく方法を考えずにコンクリを流し込んでしまったので、結局、固まるまで床下に潜ったまま、手で支えていました。(汗) 手を離すとアンカーボルトか沈んだり、傾いたりするので、暗くなるまで床下でずっと直角定規を持って寝転んでいました。

結局、正月2日から作業や材料の買い出しを始め、5日には何とか基礎を作り終えました。ブロックの手前には、平らなコンクリート板をおいて一緒に固めましたが、そこはジャッキを置く場所となるからです。柱をただ梁の下に押し込んでもダメです。柱、梁、土台にホゾを刻んで、梁を持ち上げてから突っ込まないといけません。そのためですが、予定通りいくかどうかの詳細は次回以降に報告したいと思います。ああ、薪ストーブも新設する柱に近過ぎるので、少し離すように手前に移動しました。

さて、既に話した通り、私は素人同然です。念のためインターネットでも調べてみましたが、さすがに切り落とした梁を支えるべく、柱を追加する方法など、説明してくれるサイトなどありませんでした。(笑) 梁も有機的に上下左右にうねっていて、角材のように直角を確保できないので、そのあたりの加工も至難の業です。今書いたことや、今後報告する施工法は、基本的にすべて自分で試行錯誤の末にたどり着いた方法で、おそらく一般的な方法ではないと思います。まず居ないとは思いますが、ご覧頂いた方は、決して真似せず、構造に影響するような大掛かりなリフォームは業者に頼んでくださいね。